· 調査レポート,テキストマイニング

アルバイト離職白書 上司のかける「言葉」の効果

昨今、アルバイトの人手不足が深刻化し、さらに採用したアルバイト人員が早期に離職する等の定着率の問題は、企業にとって大きな痛手となっています。そこで、この度、人事科学研究所では、アルバイトの離職理由や、定着率向上のための打ち手や対策を模索するため、アルバイトの離職に注目した調査を複数実施し、その結果を「アルバイト離職白書」として公開いたしました。

目次

1. たくさんのアルバイト経験者からのアルバイトに関する声を集めました

2. 人間関係が理由でアルバイトを辞める人はやっぱり多い

3.アルバイターとの普段からのコミュニケーションは信頼につながるかも

4. 「ありがとう」の言葉はアルバイターのモチベーションをあげる

5. 「頑張れ」と期待をかけることはもちろんアルバイターのモチベーションをあげる

6. アルバイターが上司に言われて印象に残っている悲しい言葉と嬉しい言葉

7. 親切な行いは伝染していく!

たくさんのアルバイト経験者からの

アルバイトに関する声を集めました

今回の調査では、アルバイト就労経験がある約2200人を対象に、「アルバイトを辞めた理由」や「アルバイト先の上司に言われた印象に残っている言葉」をアンケート回答により収集し、分析を行いました。はじめに、実際にアルバイト就労経験者が回答した言葉の一部をここに紹介します。

「アルバイト先の上司に言われた印象に残っている言葉」

・あなたは真面目だし努力するから大丈夫

・ネガティブに考えるのではなくポジティブにゆっくり楽しく頑張れば良い。

・ミスをしてもすぐに教えてくれればちゃんとフォローするからね

・笑顔がいいね

・いつもよく頑張っているね

・貴方は、うちの大事な戦力だ。

・いても意味ない

・熱だけでしょう!死んでない限り、出勤してください!

・そんな事も出来ないのか

・仕事を続けるか、学校と部活を辞めるか、決めてください。

・バイトは気楽で良いね

・突っ立ってねえで働けよ

・殺すぞ

……

人間関係が理由でアルバイトを

辞める人はやっぱり多い

これは2196人のアルバイト就労経験者が回答した、「現在のアルバイト先を辞めた理由」に

出現する単語を頻度の高さに応じた文字の大きさで特徴づけている図です。

※分析にはユーザーローカル社さんのテキストマイニングツール( https://textmining.userlocal.jp/ )を活用しました

以上の図を見ると、アルバイトを辞める一番大きな理由は「就職」でした。他にも「学業」や「進学」などやむを得ない事情での理由が見られます。しかし特徴的なのは「人間関係」という単語が大きく表われていることです。アルバイト先の人間関係が理由で辞めてしまうアルバイターは少なくはないようです。また、「両立」という単語も頻出で、学業や家庭などの「本業との両立」や、部活やサークル、プライベートなどの「やりたいこととの両立」が難しくなりアルバイトを辞めてしまうことも少なくないようです。「忙しい」が出てきているのも同じような理由のようです。シフトを埋めることを考えると、より多くアルバイターに出勤してほしいと思ってしまい、出勤回数を増やすことを求めてしまいがちですが、アルバイターの本業やプライベートへ理解ある態度を示すことはかなり重要になりそうです。

アルバイターとの普段からの

コミュニケーションは信頼につながるかも

以下のグラフは「アルバイト先の上司とは仕事以外の会話もできる関係だったか」を尋ねたものです。「できる関係だった」と回答した内の73%が「上司を信頼していた」と回答したのに対し、「できる関係ではなかった」と回答した内では27%と、大きな差があることが分かりました。

仕事以外の場面でも日常的にアルバイターと会話をすることが、日々の信頼関係につながる

可能性があります。

しかし、安田雪先生(2008)の若年就労者と上司、職場のネットワークを分析した研究によると、若年者本人及び上司の対人関係・職場のネットワークにおいて、「結束型」と呼ばれる、内部の関係は安定的な傾向が強い若年者に注目すると、職場の人間関係に問題を感じている傾向が強く、職場や上司の対人関係類型とのミスマッチによる多大な影響を受けると言われています。このことからも、もちろんアルバイターにもそれぞれタイプがあり、会話だけが信頼関係を築く上で最適な方法であるとは言えないことがわかります。それぞれのアルバイターに合った方法を見つけるのは大変なことではありますが、アルバイターの性格を考慮していく必要がありそうです。

「ありがとう」の言葉はアルバイターの

モチベーションをあげる

これまで、アルバイト先の上司に言われた言葉の中で、一番印象に残っている「言葉」から、上司に「ありがとう」を含む言葉がけをされたアルバイター104人を抽出して分析しました。その結果、「頑張ろうと思わない」と回答したのが21%なのに対し、「頑張ろうと思う」と回答したのが79%という結果でした。

アルバイターの普段の働きに対して感謝の言葉を述べることは、個人のモチベーションを高める

ためにも有効だと言えるでしょう。

また、以下のグラフは、「ありがとう」とだけ言われたアルバイターのやる気得点の平均値(青の棒グラフ)と、「理由 + ありがとう」と言われたアルバイターのやる気得点の平均値(黄色の棒グラフ)です。得点に統計的に有意な差異があることが分かります。

【実際の「理由 + ありがとう」の言葉】

・面倒な事をやってくれてありがとう

・助かる!いつもありがとう!

・頑張ってくれてありがとう

・遅くまでありがとうね。

このように、ただ単に「ありがとう」と言うよりも、「君がいると助かるありがとう」のような

感謝の理由も添えてあげることはアルバイターの頑張りをより高めるかもしれません。

感謝の言葉は部下の生産性をあげる?

ここで、感謝の言葉が生産性をあげた研究事例を紹介します。

 

2010年にペンシルベニア大学の心理学者のAdam Grant先生らが、アメリカの公立大学の学生を対象に行った感謝に関する研究では、卒業生のために寄付金を募る係41人を「感謝される」グループと「感謝されない」グループに分け、「感謝される」グループでは係の責任者から感謝の言葉と活動のフィードバックを受け、「感謝されない」グループではフィードバックのみで感謝の言葉は受けませんでした。

その結果、学生が募金を募るために1週間で電話をかけた回数が、「感謝されない」グループではほとんど変わらなかったのに対し、「感謝される」グループでは平均50%も電話回数が増えました。

以上の知見から考えても、アルバイターに感謝の言葉をかけることは効果的だと考えらえます。

アルバイターが印象残っている、上司に

言われて悲しかった言葉と嬉しかった言葉とは

以下の図は、テキストマイニングツールを用いてアルバイターが印象残っている、上司に言われて嬉しかった言葉と悲しかった言葉を単語の出現頻度の多さ順にグループ分けしたものです。

※(動詞・形容詞は終止形の形で表示)

※分析には、ユーザーローカル テキストマイニングツール( https://textmining.userlocal.jp/ )による分析しました

印象に残っている悲しい言葉とは

上司に言われて印象に残っている悲しい言葉には、「辞めてしまえ」などの明らかにモラルに欠けているような言葉がけも多く見られました。当たり前ですが、こういった発言はアルバイターのモチベーションを下げてしまいます。

他にも多く見受けられた言葉がけの特徴としては、アルバイター個人の資質を否定することに

繋がるものがありました。例えば、「悪い」という単語がどのような状況で用いられているのかを見てみると、「頭が悪い」「容量が悪い」といったような言葉がけで多くが用いられており、「代わり」「不器用」といった単語では、「あなたの代わりになる人は誰でもいるよ」「不器用なんだね」といった状況で多くが用いられていました。

このように、アルバイターを叱る際に、個人の資質を否定してしまうような発言は印象に残りやすく、そして悲しませてしまうことが分かります。

こういった発言をきっかけに、アルバイターとの人間関係が悪化して離職に繋がっている可能性も否めません。モラルのない言葉遣いには気をつけるべきだと思われます。

印象に残っている嬉しい言葉とは

上司に言われて印象に残っている嬉しい言葉には、先ほど取り上げた「頑張る」「ありがとう」の単語があることが分かります。さまざまなポジティブワードが表示されていますが、今回は中でも出現頻度が多かった、「お客様」「失敗」の単語がどのような言葉がけで用いられているかを調べてみました。

「お客様」という単語は「お客様のことを第一に考えなさい」や「お客様のことを思って、何事も丁寧にすること」といったような言葉がけで、そのほとんどが用いられていました。自分のやっている仕事が他者の役に立っているといったようなことを意識させる言葉がけは、アルバイターの気持ちを喜ばせることが分かります。

続いて、「失敗」という単語は「失敗は誰にでもあるよ」「失敗は悪いことじゃないよ」といったような言葉がけで多くが用いられていました。このように失敗に対して、それを咎めず許容してあげる言葉がけもアルバイターが心地よくアルバイトをするうえで必要となりそうです。

その他にも、多くのアルバイターの印象に残っている、上司に言われた言葉は「親切」な

言葉がけでした。このような親切な言葉をかけてあげることは、アルバイターの気持ちを

ポジティブにし、仕事に対してのやる気を高めていきます。

親切な行いは伝染していく!

親切な行いの効果を比較したカリフォルニア大学のChancellor, J先生らによる2018年の研究によれば、あるスペイン企業の全従業員111人の内、19人にだけ「同僚に親切をしてください(感謝の言葉を伝える等のちょっとした親切)」と事前に伝えて普段通りに働いてもらい、4週間後の従業員の仕事の満足度や幸福度等を比較しました。その結果、『親切にした側』と『親切にされた側』のどちらも仕事に対する自主性が高まり、そして親切にした側は人生と仕事に対しての満足度が上昇しました。

また、この実験で『親切にされた側』と、『何も親切をされなかった側』の親切な行いをする確率を比較したところ、『親切にされた側』は『何も親切をされなかった側』に比べて、278%も多くの親切な行いをすることが分かりました。

ちょっとした親切の言葉が、言った側も言われた側も仕事に対してのモチベーションの上昇につながっていきます。従業員が働きやすい環境を作り上げるためにも、日ごろから親切な言葉をかけてあげられるように意識してみてはどうでしょうか。

サイコロLab.では、引き続き働く人に関する調査を行っていく予定です。

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参考論文

安田 雪 

"若年者の転職意向と職場の人間関係 -上司と職場で防ぐ離・転職―" 

Works Review Vol.3(2008):32-45

https://www.works-i.com/pdf/080601_WR03_05.pdf

 

Adam M. Grant, Francesca Gino

"A Little Thanks Goes a Long Way:

Explaining Why Gratitude Expressions Motivate Prosocial Behavior"

Journal of Personality and Social Psychology 98 No. 6 (2010):

946 –955.

https://www.umkc.edu/facultyombuds/documents/grant_gino_jpsp_2010.pdf

 

Chancellor, J, Margolis, S, Jacobs Bao, K,  Lyubomirsky, S
"Everyday prosociality in the workplace:
The reinforcing benefits of giving, getting, and glimpsing."
Emotion 18(4) (2018):
507-517.

報告者

高木 祐輝(人事科学研究所・研究員)https://www.wantedly.com/users/69015986

永井 明日美(人事科学研究所・研究員)https://www.wantedly.com/users/69468633

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